高隈山(御岳(1182m)〜妻岳(1145m)〜二子岳(1107m)〜平岳(1102m)〜横岳(1094m))

【前書き】
 高隈(たかくま)山は鹿児島の桜島の南東に位置する山で垂水市内からその山容を見ることができる。学生時代には鹿児島市内から垂水へフェリーで渡り、途中までバスを使うか、アプローチも全部徒歩で歩いて登っていた。従って、今まで猿ヶ城渓谷経由でしか登ったことがない。当時はまだ猿ヶ城渓谷に山小屋が二つあり、主に道路沿いの小屋に泊まった。囲炉裏もあったので倒木を集めて良く焚火をした。山小屋には登山者が記録するノートが置いてあって、岩手方面から何度も来ている人もいたようであった。
 高隈山には、夜明けまで徹夜で酒を飲んでそのまま登ったり(昔は元気だった)、下山時に膝を痛めてトボトボ歩いていたら、山で出会った二組のアベックにリレーで垂水フェリーまで送ってもらったり、山中でカセットコンロとラーメン鍋でラーメンを作って食べたり(前の晩から3食ラーメンでさすがに飽きた)と思い出が多い。
 中国地方はまだ新雪が積もっている最中なので、天気予報が晴れの鹿児島にふらっと行くことにした。高隈山に登るのは30数年ぶり。猿ヶ城渓谷は今では車の乗り入れが禁止されているようなので御岳のテレビ塔下登山口から登ることにした。

【年月日】’12.2.11(土)
【同行者】単独
【コースタイム】(移動)出発(4:20)→北熊本SA(6:00)→吉松PA(7:20)→国分IC(7:55)→テレビ塔下登山口(9:30)

          (登山)登山口(9:50)→テレビ塔(10:18)→御岳(11:10)→妻岳(12:00−15)→二子岳(12:305)
          →平岳(13:25)→林道下山口(13:45)→横岳(13:55−14:10)→林道下山口(14:30)→林道(14:50)
          →登山口(16:25)

          (移動)登山口(16:50)→(食事)→国分IC(19:05)→山江SA(20:00)→山川PA(21:20)→帰宅(22:35)
       

【写真と解説】


 本当は昔登ったスマン峠登山口から登りたかったのですが、大野原林道の状態も良く分からないし、垂桜登山口からとも思ったのですが、ナビ上でどこか良く分からないので結局、鳴之尾牧場近くのテレビ塔下登山口からにしました。
 上の写真は鳴之尾牧場第一展望台から見た今日の登山コースです。右の最初のピークがテレビ塔、中央が御岳、左の尖りが妻岳です。


 登山口手前から見たテレビ塔です。初めて見ると結構迫力があります。


 テレビ塔下登山口の看板です。今日は御岳〜妻岳〜平岳〜横岳を往復しようと考えていたのですが、横岳に着いたのが14時ですから往復だと下山は18時でちょっとやばい。白山まで行って、白山林道から林道を戻ろうかとも考えたのですが、これも時間が掛かりそう。平岳で検討していたら平岳と横岳の間に林道への下山道があるのでそれを下ることにしました。林道歩きなら万が一途中で日が暮れても大丈夫でしょう。
 10時頃から登り始めるとやはりこういう時に時間の余裕がないですね、。


 登山口の駐車スペースはあまりないです。テレビ塔経由で御岳への登山道は右への道です。正面奥は上の看板で高塚林道と表示してある林道への入り口ですが、立ち入り禁止のロープが張ってあります。下山時はこの林道を歩いて帰ってきました。舗装してありません。


 テレビ塔へ登り始めて振り返ると中央下に登山口の車が見えます。写真中央が平岳、その左奥に横岳が見えます。中段に水平に走っているのが帰りに歩いた林道です。しかし、この時点では林道を歩いて帰ることは全く考えていませんでした。


 テレビ塔から見た御岳と左に小さく妻岳です。登山道には極うっすらと雪がつもり、地面は固く凍結しています。
 八合目よりも下から、白いツララが、帯状に水平に広がった風景が上の方に見えました。そこから写真を撮るには木の枝が邪魔になるし、多分八合目あたりに行けばその凄い滝状のツララの群落が観られるだろうと楽しみに登って行ったのですが、そのツララを見ることはできませんでした。八合目あたりは登山道から横の風景は見えないのです。写真撮影の鉄則は“すごい”と思ったら後回しにせず直ぐ撮る。何度これで後悔したことか。


 九合目から見た御岳。もう少しです。午後から晴れるというので状態はどんどん良くなるはず。


 御岳頂上に着きましたが、霞んでいます。何かおかしい。微妙に二酸化硫黄の刺激臭がします。これひょっとして桜島の火山灰が流れてきているのかも。
 昭和50年当時も桜島は火山活動が活発化していました。鹿児島市内にいてドンと爆発音がすると2000〜4000m噴煙が上昇して、20分程度すると市内に音を立てて灰が降り始めるのです。冬場は主に桜島の西側の垂水、鹿屋方面に、春から夏は錦江湾を越えて鹿児島市内へ。


 登ってきたテレビ塔方面は完全に霞んでいます。この時点では一瞬ガス?かなと思ったのですが、完全に桜島の灰です。これは横岳から桜島を見た時に分かりました。桜島の灰が一直線にこちらに流れて来ていたからです。


 写真左は妻岳、右の手前が小箆柄(このがら)岳、奥が大箆柄(おおのがら)岳です。


 今から歩く妻岳と左に二子岳です。ところでここの山の標高ですが、古い登山ガイドと現在のガイドでは標高が微妙に異なっています。登山口の看板の標高が最新版でしょうか?


 妻岳山頂です。急勾配です。まだ登山道が凍結しているから良いようなものの、少し融け始めてぬるぬると滑る場所もありました。これ下りは滑りそう。火山灰質なので雨天時や雨の後の登山は止めておいた方が良いと思います。凍結が融けた時も滑りそうです。
 さて、ここにきて新たな異変に気が付きました。触るもの全てが灰だらけなのです。ザックの上にも灰が積もっているし、地面にザックを置いても灰が舞い上がるし、木の枝を掴めば灰が着くし、体も軍手もザックもカメラも全てが灰だらけです。座ることも出来ないので立って弁当を食べました。


 妻岳から縦走コースに降りる道も急です。長くは続きませんが。
 手前の2峰が名前のとおり二子岳。少し離れて奥に平岳、その右奥に小さく見えているのが横岳です。この時点ではどこまで行くか、しっかりとは決めていません。


 二子岳山頂ですが、何もありません。何も見えません。次の山頂にも同じ看板が掛かっています。二子岳だから両方とも二子岳ということでしょうか。


 崩壊地がありました。高所恐怖症なのでこういうのは少し苦手です。


 平岳は横を素通りしてしまうところでした。登山道を塞ぐロープがあったので何だろうと、この付近が平岳のはずなので横岳へは縦走できませんよ?と示しているのか。誰がしたのか知りませんが、こいいう意味不明のことをしてもらっては困ります。取りあえず平岳の頂上が近くにあるはずなので道を探すとありました。頂上は単なる藪だけのようです。何も見えないし。元の場所に降りてきてロープの意味が理解できました。白山側からの縦走者に対して崩壊地を通らずに平岳への頂上を示すロープではないかと。しかし、崩壊地を通ってきた私にとっては、「横岳、白山方面には行けませんよ」というロープにしか見えない。


 横岳頂上です。桜島も開聞岳も360度見えます。桜島からは真っ直ぐに噴煙が向かってきています。写真に撮っても煙だけ面白くないだろうと思って撮らなかったのですが、人間の目とカメラの眼は違うので今思えば撮らなかったことを後悔。


 横岳山頂から高隈山の全貌を見ました。これ全部合わせて高隈山です。高隈山に高隈山という山はありません。
 右手前が平岳、その奥に少し頂を見せているのが御岳、その左の尖りが妻岳、その左に小箆柄岳、大箆柄岳と続きます。
 この屏風のような山並みは垂水市街からも見えます。


 妻岳から小箆柄岳、大箆柄岳までの山脈です。


 林道を歩きながら見える妻岳、御岳、テレビ塔、これらの姿も良かったです。時間が無いので登山口まで車で乗り付けて、すっと登ってすっと帰る。これでは本当の山を味わうことはできないと思います。
 昔、垂水港から歩いて、猿ヶ城渓谷では段々近づく高隈山を見つめながら、この少しづつ変わりながら近づく山容を見守る。登山口に近づく過程で既に山登りは始まっているこの楽しみ。机上での計画が楽しみなら、アプローチの過程も楽しみのはず。しかし、それはサラリーマンではほとんど無理。
 登山口まで帰り着いてびっくり。車が灰だらけ。これ、フロントガラスに傷が付くのでウォッシャー液掛けて洗わない方が良いと思い、軍手で灰を叩き落とす。


 帰りに垂水の道の駅に寄って、1280円のひな御膳を食べる。これまでは貧乏人として徹底した節約主義できたが、それぞれの地元の恩に物を買って応えることも必要かと。少しゆとりができたというよりも、ハイパーインフレでお金の価値が無くなる前に使ってしまえというやけくそだったりして。世間の人も超節約主義になったから津和野の国道9号線沿いのドライブインがほとんど潰れたのだと思うけど。
 今日は桜島は朝はおとなしかったようですが、昼前からズブズブと煙を出し続けたようです。


 昔はこの桜島に登っていた時期もあったと言います。私が噴煙を見ていた噴火口と現在の噴火口は全く位置が違います。生きているんですね。

【後書き】
 鹿児島まで福岡から車で日帰り登山。これが本当に良いことか。もう一度、垂水市街からゆっくり歩いて登りたい。

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