外国人労働者受入れ不要の理由

 改正出入国管理法の施行によって外国人労働者の受入れがお墨付きを得た。悪徳ブローカーが跋扈し、実習生の失踪者、不審死、自殺、過労死が多発している技能実習制度を残したままの改正である。

 在留上限5年で一定の技能を有する特定1号の受入れ予定は、5年間で最大34万人を目安にすると言われている。少子高齢化で労働力減少をカバーするには外国人労働力の導入が必要と言われているが本当であろうか?

 内閣府が3月29日に公表した40〜64歳の引きこもりは613000人、15〜39歳の引きこもりは541000人、合わせて115万人を超える引きこもって未就労の国民が存在するのである。40〜64歳の中高年引きこもりの原因は、退職、人間関係、病気、職場になじめない、就職活動の不調等が挙げられているが、外国人よりも質の高い労働力を放置しておいて、外国人労働者を導入するとは完全に矛盾した政策である。

 昔は会社が人を育てていたことについては過去に何度も述べたが、現在では会社は人を使い捨てにする装置に堕してしまった。特に大企業がそうである。技能実習制度でも企業が外国人実習生を食い物にしている。現代の奴隷制度とも言われている。これらは世界における日本の地位と評判を低下させる原因となることは間違いない。本当に恥ずべき実態である。これらに全く手をつけずに外国人労働者を拡大してどうしようというのか。また、引きこもりの一因が会社の労働者使い捨ての犠牲で生じた部分があることも否定できない。

 100万人以上の引きこもり者が、将来に渡って社会の大きな負担になるのは確実である。だから彼らを早く社会復帰させなければならない。障害者雇用や高齢者雇用については、色々な施策が打たれているが、引きこもり者についても、長期採用企業にはコスト的メリットを与える等の施策が必要だと思う。特に昔から人を育ててきたのは中小企業である。現在、人材採用に苦労している中小企業がこれらの受入れにベストであると考える。

 日本人の働き方はそろそろ改める必要があると考える。職場で労働者に精神的プレッシャーを掛ける割には日本の一人当たりの労働生産性は国際比較で相当低い。公益財団法人 日本生産性本部の2017年のデータを見ると日本の一人当たりの労働生産性はOECD加盟36カ国中21位一人当たりの生産性はアメリカの3分の2程度しかない。出張で韓国、中国、オーストラリアの職場を見て回ったことがあるが、日本に比べて緊張感がない。韓国、中国は日本より生産性が低いもののやはりオーストラリアは日本より生産性が高い。少なくとも日本の職場よりも楽しそうに仕事をして人生を楽しんでいる。

 欧米が外国人労働者を受け入れるのは、それなりの理由がある。アメリカはそもそも移民の国である。ヨーロッパは基本的に身分制の社会である。植民地を持っていた関係で単純労働に外国人を使うことに違和感がないというか、多分、当然と考えているのではないかと思う。しかし、日本は欧米とは異なる文化を持っている。外国人労働者を受け入れるということは、日本を身分制の社会にするのと同義である。外国人労働者が行う作業は多分蔑視されるようになるだろう。それらの職業に携わる日本人労働者も蔑視されるようになるかもしれない。

 労働力減少に正しく対処する方法。それは、まず引きこもり、障害者、高齢者等を社会に出して活躍させること。そして同時に労働生産性を上げる工夫をすること。これらのことを実現できた時、初めて日本は世界の先進国になることが出来る。何故なら日本は高齢化社会で世界の先頭を走っているからである。ここで外国人労働者を安易に増やすような施策に頼れば、日本は永久に世界の先頭に立つことは出来ないと思う。

(2019年4月8日 記)

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