メイタ(クロダイ)

 最近、体の調子が悪い。農作業を始めてから右腕が痺れたようで力が入らない。首も痛い。元々腕力は人並より少しはあると思っていたが、これに力が入らないとなると心もとない。安倍首相の集団的自衛権や解釈改憲の動きも許せないが随筆を書く気にもならない。それなりの準備が必要なのだが、その気力が湧いてこない。

 3連休の最終日をどう過ごそうかと考えた。山に登る気力もないし、家にいても益々体力が落ちる。天気も良いので数年ぶりに下関フィッシングパークに行ってみることにした。15時に4時間800円で入場。連休最終日だがアジ子釣りの家族連れが多い。狙いの場所が確保できないので適当な場所で準備をする。

 狙いはメイタ・チヌ。ここでは昔42pのチヌも釣ったことがある。ここ数年、釣り道具を使っていないので出発前に道糸を確認して、表面がざらついている部分を切って捨てる。万が一、大物が掛かった時に道糸やハリスが切れることほど残念なことは無い。数年も使っていないと多分、道糸は劣化しているだろうと心配。ついでに今日使う針、キンリュウのグレ用8号をハリス1.25号に結ぶ。体で覚えたことは何年経っても忘れていない。このハリスを1.5号にするともうチヌは餌を食べない。仕掛けは極めて単純。上から浮止め、遊動の棒浮き1.5号、錘1.5号、ハリスは二尋。ガン玉なし。要するに軽い針と長いハリスでフラフラと餌を漂わせて撒き餌で活発になったチヌを浮かせて釣る方法。浮かせると言っても餌を海底に着けないというだけで海底の少し上に浮下を調節する。ここの水深は約10m程度か。

 この日は長潮で満潮が18時。日没も18時頃なので釣れるだろうと思っていたが、15時に入場してから周りもアジ子も連れていないし、当りも全くない。16時に狙いの場所が空いたので移動して釣り始めるが、相変わらず当りも無ければ、餌も無くならない。そもそも潮が沖に流れていくので、撒き餌も沖に流れていくわけで、長潮は駄目か、と思っていると浮子が20m程度沖で止まる。合わせてみると針に貝殻のようなものが引っ掛かっている。沖が少し浅めになっているようなので浮下を少し浅くする。まだ引っ掛かるので少しずつ浮下を浅くする。その内餌が無くなり始めた。当りは全く浮子に現れないが餌が取られ始めたというのは良いことである。雑魚が多い時には餌が底に沈む前に餌を取られる事もあるが、今日は雑魚もいないようである。日暮れも近くなり、勝負の時が来たけど、今日は駄目かな、と竿を上げたら、少し重いかな?という感触に続いてゴツゴツというチヌ独特の固い感触。42pを釣った時よりも力は幾分弱いが、クロダイに間違いないだろうと思う。

 実はこの日、釣り場で竿をセットしていると先端のガイドがぽろっと外れた。接着剤が劣化していたのだろう。竿は3本準備していたので、予備の竿を使えばよいのであるが、無精なのと時間を惜しむ気持ちでそのままその竿を使っていた。だから竿が曲がって一生懸命竿を操作している時、先端のガイドは無かったのである。大物が掛かったと察知した隣の高校生くらいの兄ちゃんが釣り場に備え付けのタモの柄を伸ばして準備してくれる。慌てずに魚とのやり取りを楽しみながら少しずつリールを巻く。初心者はここで糸を巻きすぎて浮子が竿先まで来ているのにさらにリールを巻いて竿先を折ったりする。道糸とハリスに無理な力が掛からないように注意しながらお兄ちゃんが差し出すタモに魚を入れる。

 体長は34cm位。メイタ(幼魚)と呼ぶべきかチヌと呼ぶべきか。チヌは美味しく食べるためには血抜きを上手にしないと不味くて食べられない。ナイフで心臓部を狙って刃先を入れるが??血も出ないし、死にもしない。そのままクーラーに入れて釣りを続行する。その後、バリ(アイゴ)の子供が連れた頃から急に突風が吹き始め、納竿とする。

 家に帰って嫁さんに刺身にしてくれ!下すのが下手なので身は少なかったが、充分旨い。絞め方はこれで良かったのかもしれない。これまで何回かメイタ・チヌを釣って食べたが、今回が最も美味かった。これまでもナイフで絞めていたのだが急所を外れていたのかもしれない。

 因みに撒き餌はチヌパワーとおから団子とオキアミ。タモを出してくれたお兄ちゃん、ありがとう。

(2013年10月15日 記)

TOPページに戻る