童話:ねこのさいごのにもつ

 この話は奈良のお寺の住職でシンガーソングライターでもある“やなせなな”師の講座で聞いた話です。
 ちゃんとした童話として本になっていたらしいですが、詳しい本の題名などは分かりません。
 あらすじを以下に再現しますが、細かい点はよく覚えていないので適当にアレンジしています。
 何故か非常にこの話に感動しました。

 僕はトラです。僕の面倒を見てくれるのは家のお母さんです。いつも餌をくれて可愛がってくれます。お母さんには長女と次女の二人の子供がいます。長女は僕にあまり関心が無いようですが、次女は僕の尻尾をつかんだり乱暴にするので僕はあまり好きではありません。

 ある日、阿弥陀様から僕に手紙が届きました。手紙には一ヶ月後にお迎えに行くが、一個だけ荷物として好きなものを持って行って良いので決めておくように書いてありました。

 僕は一ヶ月の間、家の周りを探検したり、友達と会ったり楽しく過ごしました。一個だけ御浄土に持っていける荷物は僕の大好きなお母さんにしようと考えていましたが、お母さんがいなくなったら長女と次女が悲しむだろうと次の候補を考えました。お母さんと一緒に行けないのは残念ですが、お姉ちゃんとなら一緒に行けると考えましたが、お姉ちゃんを連れて行ったら母さんが悲しむだろうと仕方なく次女と一緒に行くことに決めました。

 阿弥陀様の御迎えの日が来ました。僕はなんだか体が重くて横になっていたのですが、僕の横でわあわあと大きな泣き声が聞こえます。重たい瞼をやっと開くと僕の前で次女が大粒の涙を流しながら大声で泣いていました。いつも僕に乱暴にしていた次女だけど、この次女を連れて行ったらお母さんと長女が悲しむだろうなと思いました。

 トラは御浄土に行きました。お母さんたちがトラの餌の缶詰を置いていた棚を見ると缶詰が一つ減っていました。

 トラが最期の荷物としてお母さん、長女、次女を考えたけれども結局、餌の缶詰を持っていったという話です。さて、どこに感動する部分があるのでしょう。

 私は阿弥陀様の御迎えの手紙、現実に置き換えれば医者からの余命宣告のようなものでしょうか、それを素直に受け入れて、残された日々を楽しく過ごし、一生懸命阿弥陀様から言われた最期の荷物を何にするか考えたトラの姿勢に感動したのかな?と考えているのですが、自分でもよく分かりません。

 トラは1月16日に外で猫の叫び声を聞いて外に飛び出していったきり戻ってきません。
 屋内の壁や壁紙で爪とぎをせず、夜中に起きることなく朝まで一緒に寝てくれる珍しい猫でした。


 まだ野良だったトラを飼い始める前、冬の寒い日に屋外の段ボールの中で妹と寒さに耐えるトラ。


 畳の上で寝てます。この頃はやせてましたね。

 なんまんだぶ、なんまんだぶ。

(2020年2月27日 記)

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