人間という不気味な存在

 人間という不気味な存在。
 何が不気味か。
 限りない欲望が不気味である。

  死にたくない。死にたくないから医者は患者を1分でも1秒でも生かそうとする。どんな状態であっても生かそうとする。意識がなくても生かそうとする。どんなに金が掛かっても生かそうとする。それで国が滅びることが分かっていても生かそうとする。患者も治療を要求する。抗がん剤が効かないと分かっていても求める。死ぬ間際まで抗がん剤を要求する。何の為に生きているかも忘れて抗がん剤でよれよれになりながら最期を迎える。 

 生まれてくる子供は健康であって欲しいと思う。
 生まれてくる子供は障害を持っていて欲しくないと思う。
 生まれてくる子供は障害を持っていてはならないと思う。
 だから生まれる前に受精卵の遺伝子検査を考える。遺伝子に異常があればこの世から事前に抹殺しようとする。
 そのうちこの世には健康で天才クラスの人間しかいなくなるだろう。何故なら生まれてくる子供は健康で頭が良くあって欲しいから。体が弱く、頭の悪い要素を持った受精卵は生まれる前に抹殺されるようになるだろう。それが親の要求であるから。 

 暑くも寒くもない快適な状態で暮らしたい。
 暑いのは駄目だ。寒いのも駄目だ。
 暑ければクーラーをつける。寒ければ暖房をつける。湿っていれば除湿する。化石燃料が有限だなんて関係ない。地球温暖化なんか関係ない。地球が温暖化したら、それに負けない位クーラーを掛ければよい。
 地球温暖化で海水面が上昇しても関係ない。堤防を作れば良いんじゃないか?日本は津波に備えて国土の周りを高い堤防で囲うのだから1mや2m程度海面が上昇しても関係ない。南の島が水没してもそんなことは関係ない。そんな島に住んでいるのが悪い。こっちは暑いのも寒いのも嫌なのだ。
 そもそも海水面なんか10万年単位でみれば100m位変動している。数千年単位でも6m位変動している。1mや2mで騒ぐことはない。こっちはガソリンを節約する気もないし、便利を犠牲にする気もない。シェールオイルもあるし、天然ガスに至っては230年分もあるからまだまだ使いたい放題だ。

 アフリカの貧しい子供達を救わなければならない。
 アフリカの貧しい子供達に教育を受けさせなければならない。
 アフリカの貧しい子供達に衛生的な生活をさせなければならない。
 アフリカの貧しい子供達に文化的な生活をさせなければならない。
 世界人類70億人は皆、健康で文化的な生活をする権利がある。
 人類が共倒れしても全地球人が便利な生活をするべきである。有限の大きさをもつ地球であっても70億の人間全てが欧米の言う健康で文化的な生活をするべきである。それは夢であるとか、欺瞞である、などと考えてはいけない。
 このことを実行するために欧米の価値観を教育によって世界の果てまで押しつけなければならない。地域固有の文化や伝統を認めてはならない。消費は良いことである。スマホは便利である。裸で生活するようなことは認めてはならない。電気が無いような生活は、それが例え今後数万年に渡って持続可能な生活であっても、野蛮な生活なので認めてはならない。キリスト教以外の野蛮な宗教を信仰してはならない。 

仏教は人間の欲望に着目した。
 欲望はコントロールされるべきものである。
 むき出しの欲望は獣である。
 我々は獣にさせられた。
 欧米によって獣にさせられた。

(2015年6月5日 記)

TOPページに戻る