羅臼岳の登山者クマ被害に思う

 昨年あたりから熊が町中に出没して問題化している。九州にも昔はツキノワグマがいたが2012年に環境省が絶滅宣言を出しているので九州では問題になっていない。

 北海道では先日、新聞配達員が襲われて藪に引きずり込まれて死亡した。人を恐れるどころか、空腹のために積極的に町に出てゴミ箱をあさり、人も襲っているように感じる。こういう状況下で比較的熊の密度が高い北海道の山域で登山者は大丈夫なのだろうかと心配していた矢先に羅臼岳で登山者が熊に襲われる事故が発生した。

 それは今月の14日11時頃に羅臼岳から岩尾別温泉に向けて下山中の標高550m付近(オホーツク展望付近か)で東京の26歳男性がヒグマに襲われて行方不明になった。一緒に登山していた友人が警察に通報した。その後、羅臼岳は入山規制され、入山していた登山者約70名が警察などのヘリコプターで救出された。被害者は15日に遺体が発見され、付近で親子3頭のヒグマがハンターによって駆除された。

 この事故の前、10日に羅臼岳登山道では羅臼平と銀冷水の間でヒグマが登山者に3mまで近づく事案があり、12日には銀冷水と弥三吉水の間で登山者とヒグマが遭遇し、登山者がクマ撃退スプレーを噴射するも数分間にわたって付きまとわれたという。これを受けて13日に斜里町職員3名がヒグマを追い払うためのパトロールを行ったが、ヒグマは確認できなかったらしい。

 知床半島の羅臼岳には北側の岩尾別温泉から登るルートと南側の羅臼温泉から登るルートがある。北側の知床五湖やウトロは観光地でヒグマの数も多く、テレビでも良く放映されていた記憶がある。羅臼岳登山のメインルートは、この北側ルートで今回の事故もこのルート上で発生した。

 私は1999年の7月に羅臼温泉側から登った(羅臼岳)。本当は岩尾別温泉側から登りたかったのだが、駐車場に車を止められるか心配で羅臼温泉側から登った。こちらは不人気コースで登山者がほとんどいない。その日の登山者は登山口のノートを見る限り3名であったが、山頂では岩尾別温泉側からの登山者が多数いた。登山口のノートの前日欄に羅臼平で小熊を見かけたので引き返したとの記載があり、26年前もヒグマはこの山域で生息していたことが分かる。登山道に大きな糞もあったのでクマ避けの鈴だけでなく笛も鳴らしながら歩いた。

 私が心配していたのは羅臼岳から硫黄山への縦走コースや幌尻岳の山深くて登山者も少ない山域であったが、羅臼岳の登山者が多いメインコースで事故が発生したことが解せない。多分、連日100名位の登山者がいたのではないだろうか。そして事故の数日前から異常に登山者に接近し始めたヒグマは事故を起こしたヒグマと同一と考えるのが合理的だと思うが、何故、急に登山者に近づき始めたのか?

 これは私の勝手な憶測であるが、登山者の誰かが食べ物をヒグマに与えたのではないかと疑っているそうでなければ羅臼岳周辺で登山者と共生していたヒグマが急に人間に近づくようになるはずが無いのである。知床半島の野生動物の保護と管理に取り組む「知床財団」が7月29日に知床公園内で車内からヒグマにスナック菓子を与える様子を目撃したという。こういう馬鹿人間がまだ日本にいるのかと恥ずかしい。外国の観光客の可能性もあるが。「知床財団」は食べ物を与えられたヒグマは行動がエスカレートしていくと人に危害を加えるようになると危険性を指摘している。

 事故を起こしたヒグマ親子3頭は射殺された。可愛そうなものである。もし、ヒグマに登山道で餌を与えた、又は登山道に食べ物を落とした登山者がいたら貴方は殺人者です。私はそう思う。

(2025年8月16日 記)

 その後の調査と報道を以下に要約する。
@駆除された母グマが下山中の被害者を襲った個体であることがDNA鑑定で判明した。
A知床財団はこのクマを以前からSHと記録して、人に対する警戒心が低いクマと特定していた。
Bこのクマは地元ガイドや写真愛好家の間で有名な存在で「岩尾別の母さん」と呼ばれていた
C被害男性はクマ避けの鈴を携帯し、同行者から離れて単独で走って下山していた。
D事故現場の登山道脇にはアリの巣があり、ヒグマがアリの幼虫を食べる場所であった。
Eこのクマの「岩尾別の母さんルート」なるものがあって、過去にそこにカメラマンが凄く群がって撮影していた。

 要するにこの母熊は知床財団、地元ガイド、写真愛好家などに名を知られた有名なクマだったという事です。
 このクマからすれば日常的に人間を目にして人間を敵にするでもなし、自分の好きな行動をしていただけのようです。
 人間を怖がる様子も無かったようなのでのんびりした性格だったのかもしれません。
 今回の事故現場は木が生い茂って視界が効かない場所のようで、そこに単独で走ってきた被害者とクマが鉢合わせして慌てたクマが子グマを守ろうとして被害者を襲ったのでしょうか?
 2022年まで知床財団のヒグマ対策の最前線にいた石名坂豪氏は、『ヒグマに人は怖い、会ったら恐い思いをするという事を学習させないといけない。それが、最近ではクマに近づいて撮影するなど、人間から近づいてしまっています。その上、登山客が食べ物の入った荷物を置いていってしまい、その食べ物を食べて味をしめてしまう、なんてこともあるんです。』と言っている。
 思うに被害者も可哀想ですが、駆除された母子3頭のクマも可哀想です。
 人間とクマの共存の仕方について予算をつぎ込んで行政が対策を考えてほしいと思います。そして、研究の知見に基づいて観光客や登山者に対する規制を徹底する。
 特に知床はヒグマの密集地ですから共存の最前線として対策に国が動いても良いのではないかと思います。
 しかし、今回の事故は、広い意味での関係者の事前の注意喚起があれば防げた事故だと思いますが、日本はこういう問題には予算を出さないし、結果として対策も打てない国だと思います。残念。

(2025年8月22日 追記)

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