石油禁輸。その時、日本はどうしたか。日本≒北朝鮮。

 数年前からアメリカが北朝鮮に対して繰り返し経済制裁を加えるのを見ながら、戦前の日本は正に現在の北朝鮮のような存在だったのだろうなと考えていた。

 その当時の日本は、欧米に対抗して遅ればせながら植民地獲得に乗り出し、中国に進出していった。侵略の過程で“戦争”を行ったとアメリカに認定されると経済封鎖を受けるため、“事変”ということにして侵略を続けた。ヒトラーに騙されて三国同盟を結ぶ羽目になり、英米を敵に回すどつぼに嵌っていった。日本軍部はアメリカ国民には厭戦気分が強く、日本が南部仏印の石油確保に動いても戦争にはならないだろうと高をくくっていたが、暗号解読で日本のたくらみを知ったルーズベルトは、在米日本資産の凍結、石油の対日輸出全面禁止を昭和16年7月25日と8月1日に発令した。

 石油、鉄鋼、工作機械などの70%以上をアメリカから輸入していた日本にとって残された道は、中国と仏印から軍隊を撤退させるか、石油などの資源を求めて南部仏印に進軍するかとなって、日本は後者の道を選び、太平洋戦争に突入した。

 北朝鮮の核とICBMに対する執念とアメリカに対する敵意は異常と感じるが、アメリカもフセインやカダフィといった自身が気に食わない指導者は片っ端から抹殺してきた実績があるので北朝鮮がアメリカに対して用心するのは当然であろう。特にアメリカは、過去の北朝鮮との交渉において、金正日が核の先制使用を止めるよう懇願したのに対してアメリカは核の先制使用を否定しなかった。要するに核を保有して、ICBMを持たなければ、自分がやられるとアメリカは金正恩に思わせたのである。

 北朝鮮が、危機を煽っているのは事実であるが、米韓合同軍事演習で“斬首作戦”などという作戦名を公表するのも完全な煽りであり、脅しであり、いかがなものかと思うが、この点を指摘するマスコミは無い。

 安倍首相が、国連で北朝鮮に対する対話はもう不要で経済制裁の強化しかないと演説した。北朝鮮とアメリカの争いに割って入り、アメリカを応援したつもりであろうが、いらぬことである。首相の最大の役目は、国民の命と財産を守ることである。北朝鮮で万が一有事が起これば、日本も無事では済まない。仮に通常兵器による北朝鮮の核関連施設のピンポイント爆撃を行って成功したとしても、高濃度放射性物質の拡散と日本への影響は避けられないだろう。どちらにしてもただでは済まない。演説の最後に北朝鮮の進むべき道について述べたのは評価できる。

 北朝鮮が崩壊して難民が大量に発生することは、どの関係国も望んでいないのであるから、素人的には解決の方向性はほぼ決まってしまうと思うのだが。どうなるのだろう。日本は経済封鎖によって、戦争を決断したのだが、同じことにならないか。

(2017年9月23日 記)

TOPページに戻る