祝?尖閣国有化1年

 今日9月11日は日本政府が尖閣諸島を国有化した日である。あれから1年経った。連日中国は公船を出して領海侵入を繰り返している。今日の朝日新聞社会面に「尖閣周辺で領海侵犯した中国公船のルート 2013年1月19日〜8月27日」として第11管区海上保安本部の資料から作成したという中国公船が領海侵犯した航跡が赤線で図示されている。それを見ると中国公船が領海内に入って、主に魚釣島を中心に好き勝手に走り回っていることは一目瞭然である。要するに日本の海上保安庁は中国公船の領海侵入を警告はしても、中国の好き放題に領海侵入させていることが分かる。もし、日本が領海侵入を阻止しようとすれば、多分、武力衝突に発展するだろう。

 朝日社会面に伊良部漁協の漢那一浩組合長の話が載っているが、記事は後半を次のようにまとめている。『もともと、あの一帯は「当たり前に日本の領土」だったという。だが、国有化で、かえって尖閣の実効支配は揺らぐ漢那さんには、中国の船があの海域を制しているようにも映る。』

 そもそも尖閣を国有化した野田元首相は二重三重のミスを犯している
 一つ目は、当時東京都知事であった石原慎太郎の東京都による購入計画に刺激されて、国による購入がどういう結果を招くかを良く考えもせずに行動したこと。現に中国公船に好き放題に領海侵入を許しているということは、日本が実効支配していないということであり、日本の立場と主張を結果として弱めることになったのである。

 二つ目は、中国の面子を潰したことである。中国は面子を大切にする国である。ある意味、命よりも面子を大切にすることもある。昨年、国有化の二日前に野田首相はAPEC全体会合のための訪問先のロシアで中国の胡錦濤国家主席と非公式に意見交換し、胡錦濤は警告を発していたという。さらに中国の共産党大会が10月に予定されていたのであるから、胡錦濤や中国共産党からすれば、喧嘩を売られたと捉えられても仕方がない。これに対して、尖閣は元々日本の領土であるから中国の面子も何も関係ない!という人もいるであろう。しかし、1972年9月の日中国交回復を目指す田中角栄首相と周恩来首相との会談で田中角栄の方から「尖閣問題をどう考えるか」と切り出し、周恩来がこの問題は知恵のある将来世代に任せようと提案して棚上げされた話は周知の事実である。この件に関して元官房長官の野中広務氏が田中角栄元首相から「尖閣の領有権について日中双方で棚上げを確認した」と聞いたとの発言を日本政府は認めていないが、大同小異の話は有名であるし、その後のケ小平との棚上げの話などは国会審議の議事録にも残っているというから間違いないであろう。この棚上げ案件を一方的に日本から破るのならそれなりの覚悟と理屈が必要であった。また、日中国交正常化40周年に当たる昨年にいきなり国有化したのも国と国の関係やデリカシーを理解しない未熟政党のなせる業であろうか。面子を潰された中国がどう出るか。自然に収まることは絶対に無い

 三つ目は、中国国民が最も日本に対して最も反日感情を抱く9月に国有化したということである。9月18日は満州事変の発端となった柳条湖事件が起きた日であり、中国にとっては、「国恥の日」なのである。日本人の100%が覚えていなくても中国人の大半は日本に対して恨みを呼び戻す日なのである。今日、野田は自分のホームページで「国有化は国家戦略上の政治決断だった。その評価は歴史に委ねる」とコメントを発表した。『その評価は歴史にゆだねる』この言葉は自民党の馬鹿政治家から何度も聞いた。遂に民主党も自民党に見習ってこの言葉を使い始めた。お粗末。この言葉は自ら現在の評価が最低であることを認めているのである。

 そもそも民主党政権は、長年の自民党政権の腐敗を打破する役目を期待されて生まれた。その期待を彼らは、単なる破壊と勘違いした。官僚を否定し、政治家の判断を民意とした。その政治家が立派な信頼できるものならよかったのであるが、実際は民主党の政治家どもはど素人集団であった。そこが間違いの始まりであった。さらに内閣法制局を無視し、素人政治家による勝手な憲法解釈を行おうとした。自民党以上のルール無視の危険集団であった。

 この非生産的な尖閣問題は、ずっと続くのであろう。巡視船も職員も増強し続けなければならない。尖閣諸島における2010年の中国漁船衝突時には私も熱くなって激論を飛ばしたが、冷静になってみると現在の状態を続けることは日中双方にとって何も良いことは無いのである。究極まで追求すると戦争しかないであろう。

 9日朝日新聞2面に『尖閣国有化「評価」56%』の記事。電話による全国定例世論調査で表題のとおり尖閣国有化を評価するが56%で昨年の57%とほとんど変わらない結果だという。特に若い30代では66%と高めで70歳以上では45%と低めだというのが気に掛かる。ただ、日中関係の悪化について、「大いに」と「ある程度」問題が併せて82%だというから真っ当な世論であろうと思う。国民が支持するという意味では祝1年か?しかし、そんなに浮かれていていいのだろうか。

 仮に中国や韓国がろくでもない国だとして、そのろくでもない国から全く信頼も尊敬もされないというのは、日本も大した国ではないような気がする

(2013年9月11日 記、12日に一部追加。)

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