オーストラリアで見た印象に残ったマナーの良さ

 今から約10年ほど前。オーストラリアの製鉄所BHPに出張しました。製鉄所の事故は重大災害になる可能性が高いため、日本の製鉄所でも社員以外の人間が構内で作業を行う場合や継続的に入構する場合には、一般的には安全教育を受けます。私も国内で約10製鉄所に入っていましたので、色々な製鉄所の安全教育を受けましたが、「構内の安全速度を守りましょう」とか、「事故が起こったら上長を通して連絡をしましょう」とか、ありきたりの教育が大半でした。

 オーストラリアのBHPでは、安全教育はテキストを用いた講義、ビデオでの説明、現場見学、最終確認テストと日本よりもはるかに内容が実用的で印象に残るものでした。因みにその当時、オーストラリアでは既に乗用車は後部座席までシートベルト着用が義務づけられ、手で持つ必要のない車内設置型の携帯電話を使用してました。

 教育の内容としては、製鉄所で使用しており、かつ、漏洩した場合の被害が重大な一酸化炭素ガスの危険性から始まり、救急車等を呼ぶ場合の場所の指定の仕方まで非常に具体的かつ実用的な内容でした。製鉄所構内は非常に広大で工場の名称も慣れない人間にとっては分かり辛いので、BHPの場合には、構内各所に大きな番号が打ってあり、非常時の場所の特定はその番号で行うことになっていました。こう言うシステム化は欧米人は得意ですね。

 さて、その安全教育の時のことです。受講者は殆ど白人で日本人は私一人だけ。人数は20〜30人程度。全員、種々の会社から集まった人間なのでお互いに赤の他人同士です。技術屋から現場作業者までいますので、学歴も職歴もばらばらで色々な生活階層の人間が集まった集団と思っていただいたら良いと思います。
 第1の印象に残った点。移動のとき、部屋のドアを必ず開けた状態で次の人に引き渡した点。当たり前の事を確実に全員が実行していました。日本では多分あり得ないでしょう。人が開けたドアを挨拶も無しで先にすり抜けていくような人間が充満している日本とは大違い。

 次に印象に残った点。これには、とにかく驚きました。
 ビデオ教育の部屋は比較的狭く、長四角の部屋で机は壁に平行に長四角状態に配置してありました。受講者は長辺に沿って向かい合うような形で着席しており、短辺を背にして講師とビデオが置いてある状態。従って、通常であれば、ビデオから遠い位置の人間は前方の人間が邪魔になって見え難い配置です。
 さて、ビデオが始まった瞬間に何が起こったか。ビデオに近い人間から一斉に椅子を後方に引いて、緩やかな扇型の配置になったのです。全員がビデオを見れる配置に1〜2秒で変化。一体どうなっているんだとびっくり。日本では絶対にあり得ない。
 小学校とかでこの辺の思いやりというか、マナーが徹底的に教育されているのかな?と思ったり。

 小泉も自分が全く持ち合わせない愛国心教育とか言う前にこのようなマナー教育を徹底させたらどうか。

 各人の車で現場見学に出るときも、車で来ていない人間のことを思いやって乗せてやったり、とにかく、初対面でも助け合いの気持ちが強い人達でした。現在の日本人が持たない良い面を確実にオーストラリア人は持っていると思った日でした。

 ところで私、英会話は殆ど出来ません。全くと言って良いほど。化学関係の専門用語は少し分かるので安全教育の内容は少しは理解できましたが。

 それにしてもオーストラリアは比較的治安も良いし、仕事をしている姿もノンビリして、せこせこしてないし、良い国だと思います。ベトナム戦争参戦とか、イラク戦争は認められませんが、興味のある国です。

 追記:会話が出来ないということは、即、食事に困ることを意味し、生まれて初めてオーストラリアでマクドナルドを食べました。“ビッグマック and コーラM and ポテトM” いや〜情けない。
 

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