どこへ行く日本

 安倍首相は憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使に必死になっている。「同盟国が敵に攻撃されている時に日本は横で黙って見ていてよいのか」という。

 いったい敵とはどこの国なのか?北朝鮮か?中国か?もし、北朝鮮が米軍を攻撃すれば、米軍は直ちに北朝鮮に対して大規模報復攻撃をするだろう。そんなことは北朝鮮は十分に理解しているから北朝鮮が米軍を攻撃するような馬鹿な真似はしないだろう。では中国か?中国は米国と2国で世界を管理しようとしているのであるから中国も米国を攻撃するようなことはしないであろう。

 そもそも『敵が攻撃してきたら』と安倍は国民を煽り立てているが、何をしようとしているのか?また、守るべきだという米国とはいったいどういう国なのか。ありもしない大量破壊兵器をでっちあげ、ありもしないイラク軍の残虐行為を国連ででっちあげ、一方的にイラクに攻撃を仕掛けて、世界を混乱と混沌状態に導いたのが米国の正体では無いのか。

 その米国から集団的自衛権の行使が早くできるようにしろと言われて、安倍は必死でやっているのだろうが、安倍の狡いところは、集団的自衛権の行使を可能にする代わりに尖閣問題で米国を後ろ盾に強気に出ているところである。米国はこれは少しやばいと腰が引け始めている。全て米国が撒いた種である。

 憲法は政府を縛る法律である。この憲法を政府が勝手に解釈変更できるなら日本は無法地帯と一緒だということになる。三権分立については小学校でも習うと思うが、『憲法は時々の政府が勝手に解釈して行使可能なのだ』と教えたらいい。こういう状態を見て、小学生でも日本という国は変な国だと認識するだろう。愛国心なんか、生まれるものか。身につくのは「でたらめな国、日本」である。

 労働者の平均給与は1997年に約36万円だったものが、2013年には約31万円まで減少している。一方、企業の経常収支は凸凹はあるものの基本的には右肩上がりである。企業が潤えば、労働者も潤うようになると竹中らは常に言っていたが、これが完全に嘘っぱちであったことはデータが証明している。労働者の平均給与が減少した原因は非正規労働者が増加したことであろう。安倍はさらに非正規労働者を増やそうとしている消費税を上げ、その税金でもって法人税を下げようともしている。どこまで労働者から収奪して、大企業優遇するのか。

 戦艦大和が僚艦9隻と共に沖縄に特攻出撃して米軍機の攻撃で沈んだ。日本軍の戦死者3729人に対し、米軍の戦死者は14人だという(3月7日付朝日新聞夕刊)。この無駄で馬鹿げて非情な特攻を主張した中心人物が連合艦隊参謀の神重徳で周囲をこう説得したという。「大和が生き残ったまま戦争に負けたら、なんと国民に説明するのか」「非情な税金を使い世界無敵の戦艦を作った。それをなんだ、無用の長物と言われるぞ」要するに自分の立場擁護のために国民を死地に向かわせたのである。安倍の政策、集団的自衛権行使も尖閣強硬策も大企業優遇・労働者いじめも慰安婦否定も日本の侵略否定も神重徳の体質と同じなのではないか。現実を直視せず、自分の空想の中の理念で生きる姿が。

 昨年10月朝鮮学校前で街宣活動を行っていた「在日特権を許さない市民の会」にヘイトスピーチは違法行為とする京都地裁判決が出た。この「在日特権を許さない市民の会」に関係する人物が松江市教育委員会に圧力を掛けて「はだしのゲン」を閉架にする原因となった。そして文部科学相と官房長官はこの松江市教委の対応を支持した。これが安倍政権の姿である。

 勇ましいことを言って、過去を否定し、国民を扇動する。それは戦前の軍部のように日本を自滅へ導く行為である。安倍は日本を戦前の状態に戻そうとしているとしか思えない。

(2014年3月30日 記)

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