日本は新型コロナで多分、医療崩壊する。

 新型コロナが日本でも蔓延し始めた。厚生労働省のHPによると3月31日18時時点での新型コロナウイルス感染症に関する入退院の状況【国内事例】を見るとPCR検査陽性者2178名で死亡57名となっている。これはクルーズ船事例を含まないデータである。これから新型コロナによる死亡率を算出すると2.6%となり結構高い値になっている。

 一方、3月29日付け日経電子版によるとドイツでは3月28日時点で感染者約50000人に対し、死亡者350人で死亡率は0.7%となってる。日本の新型コロナによる死亡率がドイツの約6倍になっている。これは日本の医療レベルがドイツよりも低いことを意味しているのか?そうではないことは明らかである。日本がPCR検査を現在でも相当制限しているのに対し、ドイツでは感染者を早期発見し、高齢者への接触を防止させるためにPCR検査を積極的に行い、感染者の早期発見に全力で取り組んでいる為、両者で感染者の把握数に大きな差が生じているからである。因みに厚労省のHPでPCR検査の実施件数を見ると1/15〜3/31で32002件。1週間当たり約4570件である。一方、ドイツは現状1週間当たり約16万件をさらに50万件まで増やそうとしている

 日本のPCR検査の制限が明確な意図に基づいているのは先の随筆にも書いたように明らかである。世界の中でPCR検査を制限しているのは日本くらいであろう。明らかに世界標準から考え方が外れている。マスコミや一部御用学者はPCR検査を制限したからこそ韓国やイタリアのように医療崩壊を起こさずに済んだという者もいるが、それは違う。感染者でも軽症者は入院ではなく、隔離だけすれば良いのであるから本質的な指摘ではない。この日本独特の方式がどのように設定されたのか、分からない。また、多くの感染症に関する医療従事者もこの点をあまり面と向かって批判する者がいない。ナビタスクリニックの久住医師は厚労省の施策を無能と批判はしていたが。日本の業界は医療に限らず非常に閉鎖的でその分野の大御所が決定したことは、その大御所が亡くなるまで変更できないなどという事があると聞く。もし、そういうことなら日本もおしまいである。 

 この日本のPCRの制限について、五本木クリニックの院長ブログに『「日本はPCR検査を積極的に行わないので、新型肺炎の致死率が高い」は大間違い。』という記事がある。この記事のポイントは主に次の2点。
  @人口100万人当たりのコロナ死亡率は日本はドイツや韓国と比べて高くない。
  APCR検査は不確実なのに対し、日本に世界とは異質なほど普及しているCTがコロナの診断に有効である。
 以上から『症例を絞ってPCR検査を行っている日本の医療体制は間違っていないと私は判断します。』とまとめられている。

 しかし、上記ブログには問題があると考える。人口100万人当たりのコロナ死亡率の比較は、コロナの蔓延状況、ステージが異なるもの同士で比べても意味がない。この数値は時間の経過と共に一定になってコロナが終焉する。即ち、コロナが収束した後に各国の医療レベルや対応を比較検討するのには意味がある数値かもしれないが、コロナの拡散状況が異なる時点で比較することにあまり意味はない。
 また、CTが診断に有効であることは中国が途中で感染者の定義をPCRからCTに変更したことからも多分明らかなことであろう。しかし、CTはX線を照射するのであるから無症状者や感染の追跡には使用できない。いくら日本に普及しているからといってお手軽な検査ではない。

 さて、なぜ日本は医療崩壊すると考えるのか。その為に現在、日本に新型コロナ感染者がどの位存在するか、推定してみよう。
 コロナによる死亡率は高齢者ほど高くなることが認められているが、それ以外では国民の栄養状態や医療レベルが同等であれば、死亡率も大きな差は無いだろうと仮定する。次にドイツと日本では日本の方が高齢者の割合が高いので日本の方が死亡率は高くなると考えられる。しかし、どの程度高くなるのが妥当か不明なのでドイツの0.7%より40%高い1.0%を仮定する。この仮定した日本の死亡率1.0%と実際の死亡者57名から日本国内の感染者数を推定すると5700名となる。厚労省が把握したPCR陽性者が2178名であるから、それ以外に把握されていない感染者が約3500名存在して、彼らはコロナ感染者と自覚することなく日常生活を送り、感染を日々拡大させていることになる。世界各国はこのような状態にならないようにPCR検査を徹底しているのであるが、日本はPCR検査を未だに増やそうとしない。要するに日本のシステムは『追跡できない感染者は放置すべし』というものなのである。感染者を放置すればどうなるか。自明の理ではないか。

 世の中には非常事態に遭遇して積極果敢に戦う人間と委縮して戦意喪失する種類の人間の2種類がある。日本の現在の政治家は皆後者である。緊急事態宣言も出し切らない。緊急事態宣言を出しても多くのことに対して強制力はないのであまり出す意味は無いだの尻込みしたことをいう人間もいる。馬鹿じゃないか。創造性が全くない。国民に訴える力量もない。だから国民も言うことを聞かない。国民も馬鹿なら国会議員も阿保。

 結論は直ぐに出る。大事無く乗り切れたらそれは日本人の中にかすかに生き続けている日本人の伝統的な生き方・心の御蔭だろう。

【追記】
 日本のPCR検査方式は、新型インフルエンザ対策特別措置法の訓練に従って行っているのだろうと考えるが、そうだとしたら大きなミスを犯していないか?
 新型インフルエンザは高致死率のインフルエンザを想定しているので、インフルエンザ症状を示す患者を対象にPCR検査をして、新型インフルエンザ患者を特定すれば封じ込めることができる。ところが今回の新型コロナは無症状や軽症者が多いという特徴があり、症状と渡航歴等に限定したPCR検査では大半の感染者を見逃すことになる。このことになぜ頭の良い医者や感染症専門家たちは気が付かないのか不思議でたまらない。因みに山中伸弥先生は、『山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信』の“5つの提言”の中で感染者の症状に応じた受入れ態勢の整備を行った上で徹底的な検査を行うことを提言されています。私はこれが最も全うな意見だと思うのですが、実情は全くこのようになっていません。
 医療崩壊が起こって、厚労省の責任を問う世論が起こらない限り、この検証が行われないだろうことは寂しい限りです。

(2020年4月1日 記)

【追記】
 “ひるおび”に新型コロナウイルス感染症専門家会議メンバーの釜萢敏氏が出演して、まだ『PCR検査は陰性であっても感染していないとは言えない』などと言っている。譬え測定の信頼度が7割であっても、7割の率で感染者を特定して、隔離する必要性を理解していない。7割の信頼度であってもダブル検査で理屈上は9割の確率で感染者を特定できるのである。この理屈を偉い先生が理解していない。実際に新型コロナに感染した患者が退院するときにはダブルで検査を行っているではないか。また、同じく出演していた田崎史郎はPCRの限られた資源は海外からの帰国者などの検査に優先的に振り向ける必要がある、などと現状肯定の発言に終始している。
 要するにこういう人達は現状のシステムを前提で物を考える頭しかない。現状をどういう方向に変えていくかという発想が全くないのである。日本人は今からこういう人たちによって間接的に殺されていくということを認識しておくべきだと思う。

(2020年4月2日 記)

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