新型コロナウイルス問題

 中国武漢で昨年12月頃に発生したと思われる新型コロナウイルスが世界中に拡散している。3700名の乗員乗客を乗せたクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号は、乗客だった香港に住む80歳の男性が香港で船を下りたあとに、新型コロナウイルスへの感染が明らかになって、横浜港付近で停泊し、新型コロナウイルスの潜伏期間が過ぎるのを待っている。この対応に対し、乗客が存在するアメリカやイギリスは日本の対応に理解を示している。

 新型コロナウイルスの致死率は当初高く数%レベルで報告されていたが、この原因は武漢の病床の少なさや中国の病院の等級制度が影響していると推定され、武漢以外の中国国内の致死率は0.2%程度でそれ程高くなさそうだと分かってきた。全ての感染者が把握されている訳ではないのでこの致死率は更に低下し、最終的にはインフルエンザと同等の0.1%程度になるのではないかと考えられる。

 新型ウイルスの世界的な感染爆発(パンデミック)の可能性は近年警告されており、今回の新型コロナウイルスも要注意であったが、今のところ重症化の程度も高くなく一安心である。

 今回の件で薬局の店頭からマスクが消えた。近年の医学常識ではマスクはウイルスの予防効果はないというのでマスクをする必要はないのであるが、多くの人がマスクを買っているらしい。毎日スーパーに買い物に出かけるが、この近辺ではマスクをしている人を見かけることはあまりない。無頓着なのか、医学常識を認識しているためか、知らないが。

 テレビのワイドショーでは連日、この新型コロナウイルス問題が取り上げられている。毎日毎日、飽きもせずダイヤモンド・プリンセス号が海水から飲料水を作って、生活排水を外洋に捨てるために一旦横浜港から東京湾を出ただの、新たに感染者が判明しただの同じ内容でうるさいので見ないことにした。

 そもそも普通のインフルエンザで日本国内だけで毎年1万人の人間が死んでいるのをどれだけの人が知っているのか。アメリカでは現在インフルエンザが猛威を振るっており、既に1万人が死亡した。今期はインフルエンザの流行が大規模だった2017〜18年の死者61000人を超えるのではないかと懸念されている。

 ワイドショーの専門家の意見も大きく二つに分かれている。白鴎大学の岡田晴恵教授は色々なテレビでよく見るがどちらかというと慎重派。ダイヤモンド・プリンセス号の封鎖も肯定している。世界的な潮流から見れば妥当な意見なのかもしれない。一方、ナビタスクリニック理事長の久住英二医師などは無症状感染者の存在から日本国内で既に感染拡大しているのでダイヤモンド・プリンセス号の封鎖の有効性も否定している。そして重要な対策は次のステージである感染発症者に対する診療体制の確立にあると提言している。

 ワイドショーでは何も分かってないコメンテーターが意味のないことを色々言っている。岡田教授なども日本の現在の新型コロナウイルスの検体処理能力を1日7000〜8000検体と発言しているが、多分あり得ないでしょう。それが本当だとしたらダイヤモンド・プリンセス号の3700名全員の感染の有無は直ぐに実施しているはず。濃厚接触が疑われるたかが300名弱の検査に何日掛かってますか?

 この辺の事情は、国立感染症研究所のホームページを詳細に読むと分かります。少し以下に抜粋する。
 ・2019-nCov(新型コロナウイルス)感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル(2020年1月24日更新):『2020年1月20日現在、2019-nCov(新型コロナウイルス)の病原体診断の確立された方法は報告されていない』と記載。
 ・2019-nCov(新型コロナウイルス)感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル(2020年1月31日更新):『2019-nCov(新型コロナウイルス)の病原体検査を依頼する際には・・・・・・』
 要するに1月20日時点ではまだ日本では病原体診断ができなかったことになる。2月7日付けの“新型コロナウイルス感染症の現状と評価と国内のサーベイランス、医療体制整備について”ではこの辺の経緯について次のようにまとめている。
 ・当初、中国から開示されたゲノム情報に基づき、感染研においてコンベンショナルPCR検査を実施する準備を整え、検査に対応した。
 ・地方衛生研究所においてコンベンショナルPCR検査が可能となるよう1月23日に国立感染症研究所から試薬を配布した。
 ・1月24日に国立感染症研究所で開発を進めていたリアルタイムPCR法による検査系が完成し、所内で実施する検査はリアルタイムPCR法に変更
 ・1月30〜31日に地方衛生研究所と検疫所にリアルタイムPCR法の試薬を配布
 以上をまとめると全国の地方衛生研究所と検疫所でリアルタイムPCR法による検査の準備ができたのが2月に入ってからということになる。この方法を実際に経験しているのは国立感染症研究所だけということになるので全国の地方衛生研究所と検疫所が直ちに対応できるわけがない。
 こういうことは適宜行政及び関係組織のホームページで報告されているのです。調べれば分かることを馬鹿なコメンテーターや専門家が勝手な予測でああでもない、こうでもないと間違った議論をしている。馬鹿げたことである。

 羽鳥慎一モーニングショーの玉川などは病気オタクで得意になって新型コロナの感染水際抑制を唱えるが、国立感染症研究所も軽症者などから国内感染の拡大の可能性と対応準備の必要性を訴えている。既に新型コロナウイルスのステージは次のステップに移ったと考えべきである。東京オリンピックへの影響を考えると対応は慎重にしなければならないが、元々東京オリンピックの誘致などやってはならないことだったのである。

 ワイドショーも阿保なコメンテーターや専門家に頼るだけでなく、行政と公的専門機関が何を発信しているのかを勉強してから毎日放映してもらいたいものである

(2020年2月9日 記)

 安倍首相が今日ツィッターで新型コロナの検査能力は、1日300検体とつぶやいています。『現状、1日最大300件程度の検査能力しかありませんが、民間の検査機関や大学でも検査ができるよう、先週来、体制整備を進めてきた結果、クルーズ船の乗客の皆さんの最大潜伏期間が経過する18日までには、1日1000件を超える検査能力を確保できる予定です
 岡田教授が何度も1日7000検体は検査可能などとと嘘ばかりテレビで連日話しているのは罪深いと思います。なぜ知らないことを知らないといえないのか。岡田教授は元国立感染症研究所の研究員だったらしいが、部署が違うから検査のことは何も知らないのだろう。知らないなら知らないと言いなさい。

(2020年2月12日 追記)

 今日、ワイドショーのひるおびで岡田教授がやっとPCR装置の機械による検出感度に触れて、これまでの発言が誤っていたことを暗に認めた。この新型コロナの検査については、政府も民間臨床検査会社の活用を始めたらしいが、ここでネックとなるのが、患者から採取した検体の運搬である。上記輸送マニュアルには『病原体を含む検体は担当者とよく相談した上で、基本的に三重梱包を行い、「病毒を移しやすい物質カテゴリーB」を取り扱う輸送業者を利用して送付してください』とある。通常の宅急便のように段ボールに詰めて手軽に送るわけにはいかないのです。梱包と表記の規格が厳重に定められています。この点を久住英二医師はちゃんと指摘していたのでこの先生は現場の細かい点についても承知されていると認識しました。
 話は変わりますが、国会では立憲民主の辻元議員の質問に対する安倍首相の不規則発言で安倍首相が謝罪することで一件落着したようですが、この緊急事態の時に野党も何をやっているのやら。馬鹿じゃないか。別に安倍首相を支持するわけではないが、野党もそれ以上に下らない。立憲民主も蓮舫や辻元を表に出して、自民党の揚げ足取りばかりに夢中になっているようでは支持できないのである。提案をしろ、と言いたい。
 ダイヤモンド・プリンセス号を停泊させて船内でどんどん新型コロナを蔓延させている無策の日本政府。世界中から日本の無策・無能を指摘される日は近い。

(2020年2月13日 追記)

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