日本相撲協会の暴力に関する体質改善が無理な理由

 昨年末は貴乃花部屋の貴ノ岩に対する日馬富士の暴行問題で日本相撲協会は連日報道の対象になった。元々相撲については、あまり興味は無かったが、これがきっかけでこの初場所からNHKの相撲中継を見始めた。昨日はジョージアの栃ノ心が優勝を決めた。日馬富士の暴行問題で相撲に外人勢は不要、特に相撲の心を理解せず、勝手な行動を続ける白鵬を頂点としたモンゴル勢は排除すべきと考えていたが、栃ノ心には好感が持てた。

 日馬富士の暴行問題が日馬富士の引退と意味の分からない貴乃花親方の降格処分で一件落着したかと思っていたら今度は、2014年9月に春日野部屋で兄弟子が弟弟子の顔を殴る傷害事件を起こしており、兄弟子は懲役3年、執行猶予4年の有罪判決を受けていたことが明るみになった。この事件について春日野親方は相撲協会に報告したと言っているが、相撲協会は世間が納得できる発表を行わずにだんまりを決め込んでいる。なぜ、こんなことになっているのか。

 私はこれまで三菱自動車のリコール隠蔽問題などを例に挙げて組織の体質は簡単に変えることは出来ないと言ってきた。体質改善には組織の根本的な問題点を抽出して、そこから改善する必要があるのだが、それは容易なことではない。即ち、根本的な問題点の抽出は極めて難しいし、抽出できてもそれを変革するのは更に難しいからである。だから組織の不祥事が発生した場合、大概は表面上の対策だけで終わることが多い。そして不祥事を繰り返すのである。例えば、日馬富士の暴行問題では日本相撲協会は「暴力問題の再発防止について」と題した研修会を開いているが、これは典型的な上っ面の対策である。

 私が最初に就職したコンサル会社では、業務時の交通事故が結構な頻度で発生していた。その度に所長が職員を集めて注意喚起を行っていたが、一向に交通事故は減らなかった。日本相撲協会の対応はこれと一緒である。暴力を止めましょうと何度言っても相撲界の体質が変わることは無い。この方法では体質改善に世代が変わる20〜30年掛かる。それでは手遅れなのである。まず、TOPの意識から徹底的に変えていく必要が有る。そもそも日本相撲協会の理事を親方連中が勤めているが、これが大きな間違いである。親方連中は相撲界以外の世間を知らない。その証拠に今回の春日野部屋の事件が明るみになっても何の対応もできていない。こんな組織は公益財団法人としてあってはならない。理事達は相撲のことは分かっても社会の常識、コンプライアンスを理解しているとは思われない

 では理事の選任、解任の権限を有する評議員会は機能しているか?日馬富士の暴行問題の時、テレビのワイドショウに何度も出演していた評議委員会会長の池坊保子は、事件の本質、即ち同席していた横綱白鵬の責任を追及することなく、警察に被害届は出しても相撲協会に報告しなかった貴乃花親方の責任ばかりを追求したのである。池坊保子は華道家元であるから組織の規律を守ることが第一であり、組織の根本的な変革などは最初から頭に無い人物なのである。このような人物が評議委員会長でまともな日本相撲協会に変革などできるわけが無い。即ち、日本相撲協会を変革するには理事及び評議委員を一掃する必要があると考える。池坊保子は、日馬富士の暴行問題で日本相撲協会が隠蔽などする訳が無いと発言したらしいが、隠蔽体質があるから貴乃花親方が警察に被害届を出したと考える方が合理的である。そもそも相撲協会では暴力行為の報告義務を協会員に課しているが、日馬富士の暴行問題について同席した白鵬や鶴竜が報告しなかった点に目をつぶっている。もし、白鵬や鶴竜が積極的に報告しておれば、貴乃花問題も生じなかったのであろうが、事件を主導・容認したと考えられる白鵬に報告を求めても無理であろう。

 さて、こんな組織が本当に認められるのか?という点を指摘しておく。マスコミもこの点を指摘していないのはマスコミのレベルが極めて低く憂えるべきことである。即ち、新たに春日野部屋の暴力問題が発覚して、春日野親方は危機管理担当の顧問と北の海理事長に報告したと言っているが、報告した証拠が無いのである。そもそも管理システムがしっかりしている組織であれば規定で親方及び協会員に暴力行為の報告義務を課した時点で報告の書式を定めているはずである。もし定めていないとしたら正常な組織とは考えられない。現在ではISO(国際標準化機構)の種々の管理システムが企業や役所に導入されている。少しでもその知識があれば、基本的な組織の運営の仕方の一部は理解できる。現代の組織において口頭での報告だけで許される事項は少ない。特にその組織での重要案件は書類で報告するのが当然である。春日野親方の報告の証拠が無いのは口頭で報告したからであろう。口頭での報告を許しているとしたら、日本相撲協会に暴力問題を無くす気が全く無いか、理事や評議委員会に組織の統治能力が全く無い、かのどちらかである。

 最後に相撲について雑談。
 白鵬のかちあげに見せかけた肘打ち等の技が横綱に相応しくないとして問題になっている。これに対して北村弁護士等の一部コメンテーターが禁じ手でない技を使って何が悪いのか、とスポーツと相撲を同一視したコメントを出している。なるほど、大相撲がスポーツであれば横綱であってもかちあげは許されるであろう。しかし、大相撲はスポーツではない。大相撲がスポーツであれば、ちょんまげは不要であるし、行事も不要。明治神宮での横綱の土俵入りも不要である。実際、スポーツとしては世界相撲選手権大会等があるので、そこでの話なら分かる。しかし、大相撲では横綱には模範的な強さが求められる。受けて立つ、後の先とでも言うか。その横綱がどのような手段を使ってでも勝とうとする気が起こったのなら即引退すべきである。そもそも白鵬は厳重注意処分を7、8回受けていると思うが、これを引退させきらない日本相撲協会は駄目である。私は白鵬は相撲界の恥さらしだと思う。

(2018年1月28日 記)

TOPページに戻る