裏口入学

 裏口入学が問題になっている。懐かしい言葉である。小学校や中学生の時だから約50年前、医学部の裏口入学のことはしばしばニュースになっていた。

 文部科学省の科学技術・学術政策局長であった佐野太被告が息子を東京医科大学に裏口入学させた汚職事件。その後の調査で東京医科大学が、女子受験生の入学試験の得点を一律に減点し、女子の合格者を3割程度に調整していることが明らかになった。

 私の古い記憶によれば、昔は私大医学部は入試の合格ラインに達していなくても点数に応じて2000万から5000万円程度の裏口入学金を支払えば合格できたと言う認識がある。当時の私は小学生から中学生であったので間違って理解している可能性もあるが、それ位、裏口入学のことは当時からニュースにはなっていた。

 それらのニュースの中でも印象に残っているのは、大学が裏口入学生に事前に入試問題を提供したにもかかわらず落第した事例があったことである。事前に入試問題を提供されても合格できないレベルの学生が医学部に行こうとしている。親が医者だったのかもしれないが。

 医者の子供は賢いか?一時期進学塾の講師をしていた経験から言うと頭が優れているのは三分の一程度か。残りの三分の二程度は我々と同じ凡人である。当人が自覚して死ぬほど勉強すれば、私大医学部にぎりぎり合格できるか、否かと言うレベル。そもそも勉強に特段の興味の無い子も多い。

 学生の頃、ある政党の講演会に行ったことがある。約40年前の話である。講演会の最後に会場からの質問に党の地方役員が回答する場面があった。質問は医者の優遇税制是正についてであった。医者がどういう優遇税制を当時受けていたのかは知らないが、その回答を聞いてあきれてしまった。回答したのは医者である。その回答の要旨は、@医者は子供を医者にさせたい。A子供の頭が良ければ国立にやれるが、そうではないので私大にやるしかない。B頭の悪い子供を私大医学部に入れるにはお金が掛かる。C従って医者の優遇税制は当然である。革新政党と言われる政党の地方役員とはいえ、この回答は無いだろうと思った。逆に言えば、多くの医者は子供を医者にさせたいと思っているのだろう。

 あれからもう40年も50年も経った。しかし、大学は何も変わっていなかった。裏口入学は未だに普通に行われていたのである。こういっては悪いが私大出身の医者には診てもらいたくないというのが本音である。日大もそうであるが、大学のコンプライアンスはどうなっているのか社会を先取りするべき大学が最も社会から遅れた存在になっている。日本の明日は危うい

(2018年8月4日 記)

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